自己効力感という言葉を知っていますか?
自己効力感とは、「自分ならうまくやり遂げられる」、「自分ならうまくいくはずだ」と自分の可能性を認知していることです。
自己効力感はスタンフォード大学のバンデューラ博士によって提唱された、人間の行動に大きな影響を与えるものなのです。
自己効力感を高めると自分を信じることができ、パフォーマンスが向上したリ、良い結果をえる可能性が高まったりするわけです。
- 自己効力感とは
- 自己効力感の高い人と自己効力感の低い人の違い
- 自己効力感を高める4つの方法
この記事では、人のキャリアにも大きな影響をあたえる自己効力感について解説します。
自己効力感とは
自己効力感とは「自分ならうまくやり遂げられる」という認知レベルです。
人は課題に取り組むときに、行動をした後の結果について予期します。
こうすればこういう結果がえられるだろうと「期待」するわけです。
バンデューラは「期待」を大きく「効力予期」と「結果予期」の2つに分類しました。
- 「結果予期」は、自分の行動がどのような結果をもたらすかという予期
- 「効力予期」は、自分が適切な行動をうまくできるかどうかという予期
この効力予期が「自己効力感」です。
自己効力感は、努力の程度、環境の選択、障害に直面した時の粘り強さなど、さまざまな行動に影響を及ぼします。
自己効力感の具体例
自己効力感のレベルは、人によって異なりますが、自己効力感が高い人と、自己効力感が低い人では、行動と結果に違いが出てきます。
- 自己効力感が高い人 ― 粘り強く努力して多少の困難に直面しても耐え行動することができる
- 自己効力感が低い人 ― 自分を信じることができず不安で行動する自信がなかなかもてない
自己効力感は具体的に、人にどのように影響するのかを具体的に考えてみましょう。
例えば同じ能力をもったAさんとBさんがいます。
Aさんは自己効力感が高く、Bさんは自己効力感が低いとします。
自己効力感が高いAさんは、何事に対しても「自分ならうまくやれる」と前向きで、自分の目標を高く設定し、さまざまな挑戦をします。
失敗をおそれず様々な提案をして実行し、力をつけていくでしょう。
一方、自己効力感の低いBさんは、能力はあっても自分を過小評価してしまします。
経験していないことへの不安が先に立ち、自分の目標やハードルをさげてしまいます。
結果的に人との関係も消極的で、「自分はやっていけない」と思い、自分自身を困難な状況に追い込んでしまうかもしれません。
経験をつむことができないため、個人的な成長もあまりできないでしょう。
このように自己効力感のレベルの違いで、たとえ同じ能力でもパフォーマンスに差がでますし、個人の成長にも大きな影響を及ぼすのです。
では自己効力感は高ければ高いほどいいのかというと、そうとも言えません。
個人の能力に比べて高すぎる自己効力感は、自分への評価になります。
準備不足のまま能力を超えたことに取り組み、大きな失敗やミスを重ねることにもなりかねません。
大きな失敗やミスを重ねることは、自己効力感を結果的にさげてしまうことになります。
適度なレベルの自己効力感をもつことが、キャリアを望ましい方向に導きます。
自己効力感を高める4つの方法
では自己効力感はどのようにして高めればよいのでしょうか。
自己効力感に影響を与える要素として、次の4つの方法(情報源)があげられています。
- 遂行行動の達成
- 代理経験
- 言語的説得
- 情緒的喚起
①遂行行動の達成
遂行行動の達成とは、いいかえると成功体験です。
自分自身の力でやり遂げたという経験は、「自分ならできる」という自信につながります。
遂行行動の達成が、自己効力感をもっとも高める情報になります。
小さな成功体験を少しずつ積み重ねることで、自分のレベルにあわせて取り組むことが大切です。
②代理経験
自分では経験したことがなくても、他者の行動を見たり聞いたりして学ぶことでも自己効力感は高まります。
どのように取り組んでいるのかを観察し、何が成功の要因になっているのかを考えることで、自分の取り組み方のイメージを持ちます。
そうすることが「これなら自分にもできそう」、「こういうスキルを学ぼう」といった気持ちをもつことにつながります。
③言語的説得
言語的説得とは、簡単にいうと「ほめられること」や「励まされること」です。
「あなたならできますよ」、「よくできましたね」といった言葉をもらうと、気分があがるというのは経験した方もいるのではないでしょうか。
一方で否定的なことを言われると自己効力感がさがることになるかもしれません。
他者の言葉に振りまわされすぎないということも必要になります。
④情緒的喚起
生理的な反応も自己効力感に影響します。
リラックスした前向きな心理状態であれば、自己肯定感もうまくいく可能性も高まります。
一方で、不安や心配などや緊張が大きな心理状態になると、否定的な感情が強くなり「自分はできる」と思えないかもしれません。
自己効力感と自己肯定感の違い
「自己効力感」と混同されがちな言葉に「自己肯定感」があります。
「自己効力感」と「自己肯定感」は異なるので注意しましょう。
「自己効力感」は、自分が適切な行動をうまくできると考えられることをいいます。
課題に対して適切な行動をうまくできるという能力の自己評価が自己効力感です。
一方で「自己肯定感」は、自分自身の存在を肯定できること、認めることができる力です。
行動することや、うまくできるかできないかは関係なく、自分を受け入れることを自己肯定感と言います。
「ありのままの自分でいい」と思えることが「自己肯定感」になります。
自己効力感を高めよう
会社員であれば、50代という年齢は、役職定年や早期退職の募集、降格や異動、定年や再雇用、給与ダウンなど、なにかと自信を無くすような出来事がおきます。
50代は自己効力感も低くなりがちですから、自己効力感を意識して高める行動をすることも必要です。
会社で働きながら、自己効力感を高める4つの方法を上手に活用して、定年後のセカンド・キャリアの準備をはじめましょう。
①遂行行動の達成では、スモールステップで小さな成功体験を積み重ねましょう。
②代理経験では、自分の参考になりそうな人の、「こうするとうまくいく」というパターンを見つけましょう。
③言語的説得では、価値観の近い人と交流をして、コミュニケーションをとります。
良いフィードバックをもらえればモチベーションもあがるでしょう。
④情緒的喚起では、自分のコンディションを見極めて、良い状態、リラックスした前向きな状態を保ちます。
自己効力感を高めながら、長くなった人生をワクワク生きるためにセカンド・キャリアの準備をはじめましょう。
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