介護保険には介護認定区分というものがあります。
要介護認定区分は、介護サービスを利用する人の心身の状態などによって介助・介護がどれくらい必要かという介護の区分のこと。
この介護認定区分により、受けることのできるサービスや支給限度額などが決まります。
親の介護を考えるうえで、必ず知っておくべきことなので、この機会に理解してしまいましょう。
- 要支援と要介護の違い
- 要介護区分とは何か
- 要介護区分の支給限度額と自己負担額
この記事では、介護保険の要介護認定区分について解説します。
高齢の親がいらっしゃる方がこれからのことを考えるために、そして自分自身が高齢者になったときの準備として参考にしていただければ幸いです。
要介護認定区分とは
要介護認定区分とは、介護サービスを利用したい人が、介護が必要な状態か、どれくらい必要かという介護度を非該当、要支援1と2、要介護1から5という区分で表したものです。
簡単にいうと必要な介護のレベルですね。
この介護区分によって利用できる介護サービスと支給限度額が異なってきます。
要介護認定後は介護区分に応じて、自宅での暮らしを続けながら、調理や清掃、入浴、移動などの居宅での介護サービスを利用したり、施設へ入居しての施設介護を利用したりすることも可能です。
介護サービスを受ける場合、本来なら高額な費用がかかりますが、日本には介護保険制度があるので、要介護認定を受けている方は、1~3割の自己負担で介護サービスを受けられます。
要支援と要介護の違い
そして要介護度は、大きく「非該当」(自力でできる)、「要支援」、「要介護」に分かれます。
非該当は、介護サービスの支給対象外で介護サービスを受けることはできません。
「要支援」、「要介護」の認定を受けた場合に介護サービスを受けることができます。
まずは大きな枠組みである「要支援」と「要介護」の違いを理解しておきましょう。
要支援とは
「要支援」の本人の状態は、基本的に一人での生活が可能で、部分的な支援を要する状態です。
高齢者ができるだけ一人でできるように支援するのが目的なので、利用できるのは介護予防サービスです。
そして要支援の方のケアプラン(介護サービス計画書)の作成は、地域包括センターが担当します。
例えば私の父の場合は、91歳まではひとり暮らしをしており、要介護認定区分も「要支援1」でした。
というわけでケアプランは地域包括センターが作成し、足腰が弱くなるのを防ぐための通所リハビリテーションに通ったり、転倒防止のために家のリビングや脱衣所に手すりをつけたりしていました。
要介護とは
「要介護」の本人の状態は、運動機能や思考力の低下により、ひとりでの生活が困難な状態になります。
一人で身の回りのことを出来ない高齢者の世話をしたり自立を支援したりするのが目的であり、利用できるのは介助・介護サービスになり、介護する側の負担は大きくなります。
「要介護」になるとケアプラン(介護サービス計画書)の作成は、地域包括センターではなく、ケアマネージャーという介護支援専門員の管轄になります。
「要支援」になると利用する介護サービスも増えるため、より詳細のケアプランの作成が必要になるからです。
私の父は92歳で足腰がよわくなり自力での日常生活が難しい状態になりました。
そこで介護区分の変更を申請して要介護認定区分の見直しをしてもらい、結果「要介護2」になりました。
要介護認定区分の早わかり表
このように要介護認定区分は、要支援1と2、要介護1から5に分かれます。
それぞれの介護区分を本人の心身の状態と、必要となる介護サービスという視点からざっくりまとめたのが以下の早わかり表です。
左から右に要支援1から介護の必要な状態が大きくなり、一番右がもっとも重い要介護5になります。
要介護度がたかくなるにつれ、日常生活能力が低下し、介護する側の負担が大きくなります。
本人の状態を低下している日常生活能力、つまり必要となる具体的な介護サービスみていくことで、大体のイメージをつかみましょう。
ただ本人の心身状態は、人によって違いがあるということにも注意が必要です。
要支援1とは
本人だけで暮らせる日常生活の能力は基本的にあるが、起き上がりや立ったり座ったりといった動作にふらつきがみられるなど、介護状態にならないような予防が必要になります。
要介護度は一番かるい状態です。
要支援2とは
要支援1と同様に、日常生活能力はあるものの部分的な支援を必要とするケースは増えてきます。
例えば片足で立っていることが難しくなったり、入浴のときに浴槽をまたぐことが難しくなったり、買い物に行くことが難しくなったりということがあります。
ここまでが要支援の状態です。
要介護1とは
要介護は、自力での生活が困難な状態で、要介護1から数字が大きくなるにつれて介護の負担が大きくなります。
要介護1では、起き上がったり座ったりといった動作のふらつきや困難などに加えて、入浴などにも部分で的な介助が必要となります。
認知機能や思考力、理解力の低下を感じることもあります。
要介護2とは
立ったり歩いたりといった動作を自力で行えないことが多くなります。
着替え、食事、排せつ、入浴といった日常的な動作に介助が必要になります。
認知機能もさらに低下して、薬の管理や、お金の管理が難しくなり、問題行動も多くなっていきます。
要介護3とは
基本的な日常の動作だけではなく、着替え、食事、排せつ、入浴といった日常動作にも全面的な介助を要する状態です。
要介護3からは介護の段階が比較的強い段階とされています。
介護する人の負担も大きくなるため、公的施設である特別養護老人ホームへの入居条件も要介護3以上となっています。
要介護4とは
基本的な日常の動作だけではなく、着替え、食事、排せつ、入浴といった日常動作にも全面的な介助を要する状態です。
両足で立っていることが難しくなったり、座っていることが難しくなったり、移動や洗顔も難しくなります。
認知機能が低下して、意思の疎通が難しくなり、問題行動も見られます。
要介護5とは
寝たきり状態で、介護なしでは生活できない段階です。
意思の疎通も難しく、介護者は1日のほとんどの時間を介護についやすようになり、負担が大きくなります。
要介護5がもっとも重い介護度になります。
要介護区分と支給限度額
ここからは介護に関するお金の話。
要介護区分によって受けることのできる介護サービスと支給額、自己負担額が異なってきます。
自己負担額の計算方法は、居宅でうける介護サービスと施設に入居する場合の介護サービスで違いますが、まず居宅サービスで支給限度額と自己負担額を説明します。
在宅で利用する居宅サービスの場合は、要介護区分ごとに支給限度額がきまっており、介護度が高いほど、支給限度額も多くなっていきます。
介護サービスを受ける場合、本来なら高額な費用がかかりますが、要介護認定を受けている方は、支給限度額までは、1~3割の自己負担で介護サービスを受けられるわけです。
このように介護サービスには介護区分ごとに支給限度額がきまっていますが、限度額いっぱいまで使えばいいというものではありません。
地域包括支援センターの人やケアマネージャーと相談しながら、必要な介護サービスの利用を検討します。
どんな介護サービスが必要で、利用するのにいくらかかるか、それが支給限度額内か、支払い能力があるかを考えることが大切なのです。
また介護サービスの費用は住んでいる地域によっても異なりますので、詳しくはお住まいの市区町村に確認すると正確です。
一方で老人ホームなどの施設に入居した場合は、介護区分ごとに自己負担額がきまっており、毎月一定額を払っていくことになります。
つまり施設内でどれだけ介護サービスを利用しても、自己負担は要介護区分で決まった金額を定額で負担するだけで済みます。
施設の自己負担額は、各施設のパンフレットや料金表を確認しましょう。
年齢別の要介護認定率の推移
以下のグラフは年齢別の要介護認定率の推移をあらわしたものです。
ここから要介護1以上と認定された人が、年齢別にどのくらいの割合いるのかがわかります。
65歳以上では18%であった要介護認定は、後期高齢者といわれる75歳以上では32%になり、85歳以上では、60%を超えるということです。
超高齢化社会はすすんでおり、この傾向は一層強くなるでしょう。
まとめ:要介護認定区分の早わかり表
超高齢化社会の今において介護は他人ごとではありません。
人生100年時代といっても85歳をすぎれば半数以上が要介護になります。
いえいえ、むしろ85歳まで持てばよいほうかもしれません。
そして介護は親のことのみならず、自分のこととして考えるときがやってきます。
ところであなたは親の介護認定区分を知っていますか?
もし知らなかったら、確認するところから始めましょう。
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