日本では昭和初期の高度成長期から長い間、終身雇用制度が当たり前でした。
大学を卒業すると、新卒として20歳前半で会社に入り、そのまま同じ会社で働き続けて60歳で定年を迎え、定年後は年金で悠々自適に過ごすというパターンです。
この新卒一括採用、終身雇用、年功序列、定年退職という4つの仕組みがワンセットになって日本の高度成長を支えてきたのですが、その要となる終身雇用制度が崩壊しつつあるといわれているのです。
いえ、私からみるとすでに崩壊していると思います。
終身雇用が崩壊したということは、昭和末期から平成初期に就職したいわゆるバブル世代にとってどういう意味なのでしょうか?
私たちはこれからどうしていけばよいのでしょうか?
私は昭和40年生まれの、いわゆるバブル世代です。
終身雇用と年功序列の崩壊、さらに人生100年時代の変化に対応するためには、会社にたよらず自分で稼ぐ力が必要です。
終身雇用が崩壊すると、どうなるのか?
終身雇用が崩壊したら、会社はもう社員の生活の面倒を見てくれません。
一度会社にはいったら、ずっと定年まで面倒をみてくれるとは限らないのです。
そしてもちろん、定年後の生活の面倒もみてはくれません。
昭和のはじめに生まれた私たちの親の世代は、会社員でいる限りずっと会社が面倒をみてくれて、定年後は年金で暮らすことができました。
でも終身雇用法崩壊後の、私たち今の50代にはそのパターンはもう通用しないのです。
更に人生100年時代ともいわれますが、私たちバブル世代にはロールモデルは存在しません。
1971年生まれの約半数が95歳まで生きるといわれていますが、その生き方を親の世代から学ぶことはできないのです。
私たち自身で会社と年金に面倒をみてもらうスタイルではない新しい生き方を創っていかなければならない。
では、どうすべきか?
答えは、「会社に頼らないで生きていける自分で稼ぐ力を身につけること」です。
終身雇用のメリットとデメリット
終身雇用にはメリットとデメリットがあります。
- 新卒一括採用で入社すれば、定年まで安定した収入と雇用が約束されること
- 終身雇用とセットの年功序列という仕組みで勤続年数にともない給与があがっていくこと
働く側にとっては、安心感があることが大きなメリットですね。
終身雇用崩壊とは、その安心感が崩れてきているということです。
そして終身雇用が崩壊するという話のさいには、終身雇用のメリットばかりが強調されがちですが、終身雇用にはデメリットもあるのです。
終身雇用のデメリットは以下です。
- 会社に依存してしまう
- 変化に弱い
新卒で入った会社にずっと居続けると、知らない間に会社の色に完全に染まってしまいます。
会社に入れさえいれば、毎月決まった金額が給与として振り込まれるので、新しいことにチャレンジしたり、死に物狂いで努力したりすることが歳を重ねるにつれて少なくなっていくかもしれません。
それが変化に対する弱さになっていきます。
突然会社が倒産や吸収合併でなくなったら、突然リストラされたらどうするかといった時の変化に弱くなっていくのが終身雇用によるデメリットです。
今の人生100年時代は、会社を定年退職した後も変化に対応しないと生きていけないと感じています
終身雇用とは、そもそもどんな仕組みなのか?
終身雇用というのは、大正末期から昭和初期に生まれた日本独特の仕組みですが、新卒一括採用、終身雇用、年功序列、定年退職という4つの仕組みがワンセットになっているのが特徴です。
この仕組みが日本は第二次世界大戦後の高度成長を支えてきたのです。
入社してからしっかりと人材育成を行い、優秀な人材を育て上げ愛社精神も高まり、欧米の成果主義にはない良いところもたくさんある仕組みです。
でも問題なのは、そもそも終身雇用という仕組みは、右肩上がりの経済成長と人口増加がベースになっていることです。
終身雇用をささえる経済はどうなっているか
では終身雇用の基本となる経済の成長はどうでしょうか?
日本の経済成長は、もう右肩上がりではありません。
以下の厚生労働省の資料によると、経済成長は高度成長期からバブルの時代は堅調であったものの、1990年前半のバブルの崩壊以降は成長の速度が鈍り、景気は冷え込みます。
いわゆる「失われた30年」です。
また2019年からのコロナによって、経済はマイナス成長になっています。
多くの皆さんが、身をもって感じているように日本経済は成長していません。
そして給与も下がり続けているというのが実態です。
終身雇用をささえる人口はどうなっているか
日本の人口はどうなっているでしょうか。
日本の人口は減少しています。
日本の人口は1990年代後半ぐらいから横ばい傾向になり、2008年をピークに減少傾向になっています。
さらに減少率は上昇して高齢化が急速に進み、2021年では、65歳以上の人口は28.9%で過去最高です。
このように人口が減り、高齢化が進むことによって会社が一生面倒をみてくれる終身雇用という仕組みは、時代にあわなくなってきているのです。
一括採用、終身雇用、年功序列、定年退職の1セットはもう成り立たない
高度成長期ではうまく機能した、一括採用、終身雇用、年功序列、定年退職の1セットはもう成り立たないのです。
- 経済の成長は期待できず、給与は下がり、年金は減る
- 人生100年時代といわれ平均寿命は延びて、高齢化が進む
これが現実です。
だから私たち50代のバブル世代以降は、もう私たちの親の世代がやってきたような生き方では難しい。
今の50代以降は、定年の60歳まで、年金をもらうまでの65歳まで同じ会社で働くことはできない可能性が高いと思っていたほうが良いと思います。
会社側も、終身雇用が崩壊していることをわかっているのです。
終身雇用についてトヨタの社長がいったこと
2019年の5月、日本自動車工業会の会長会見でトヨタ自動車の豊田章男社長がいったことが、話題になりました。
こういったのです。
終身雇用の象徴的存在でもあったトヨタの社長の発言だけに注目されました。
さらに当時の経団連の中西会長も、以下のようにいっています。
「働き手の就労期間の延長が見込まれる中で、終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている。」
終身雇用と年功序列という制度は、グローバル化と技術革新などによって、高度成長期のような右肩上がりの経済成長が期待できない今、維持できないといっているのです。
非正規社員はどんどん増えている
さらに終身雇用が崩壊しはじめている、しているという理由をいくつかあげてみます。
まずは、契約社員や派遣社員、パートといった非正規社員の増加です。
総務省統計局の「統計が語る平成のあゆみ」によると、非正規の職員・従業員は平成の30年間で「817万人」から「2,117万人」と1,300万人増加し、全体に占める比率も19.1%から38.2%に増加しています。
この先も、非正規社員が増加していくでしょう。
非正規社員が増加する、正規社員が減るということは、実質的にも終身雇用は崩壊していくということを意味します。
早期退職者の募集が毎年行われている
先ほどのトヨタ社長の発言の裏には、50代の人材の問題があるようです。
会社にいるのに仕事がない、いわゆる雇用保蔵者は日本に400万人もいるというのです。
雇用保蔵者とは、企業に雇われ給料はもらっているが、それに見合う仕事がない働いていない人のことです。
会社に価値を提供していないとみられている、雇用保蔵者の多くが50代です。
これは会社にとっては大きな問題です。
東京商工リサーチによると、主な上場企業で2020年には93社で18,000人以上もの早期退職者の募集が行われています。
これは、別の言葉でいうと、大企業が終身雇用をせずに、人員を削減しているともいえます。
50代以上の4人に1人が転職経験
そして50代の転職経験者は4人に1人もいるというのです。
会社側に見切りをつけられたのか、会社に見切りをつけて転職したのかは定かではありませんが、
4人に1人というのは思った以上に多いと思いませんか?
そして転職者にしめる50代の割合も増加しているそうです。
私も50歳を過ぎてから3回の転職をしています。
こういった様々な状況を見ても、もはや終身雇用は崩壊していて、会社に居続けること、しがみつくことのほうがリスクだといえます。
終身雇用を信じていた馬鹿な自分
私は50歳の時にリストラにあい、17年間勤めていた会社を辞めました。
そこから50歳をすぎてからの3回の転職がはじまるのですが、そもそも17年間勤めていた会社に定年までいれるかなという甘い考えももっていました。
そう、まだ終身雇用を信じていたのです。
しかも私はその会社のスタートアップメンバーですし、外資といっても日本法人。
まさかリストラされるとは思いませんでした。
日本ビジネスの立ち上げから、ここまでの成長に大きく貢献してきた自負もありましたし、まさか自分が「やめてください」と暗にいわれるとは夢にも思いませんでした。
そういう意味では、まさに私が終身雇用を信じて絶望を味わった一人なのです。
だからこそ、今も終身雇用を信じて疑わない善良な50代のサラリーマンに、終身雇用は崩壊しているということ、そしていつ会社からほうり出されるかわからないのに、会社に会社に依存することのリスクに気がついてほしいのです。
終身雇用と年功序列が崩れるとどうなるか?
終身雇用と年功序列が崩れるということは、いつまで働けるかも、給与が増えるかもわからないということです。
さらにいうと人生が100年の時代になった今、60歳で定年を迎え、再雇用を選択し、65歳で年金受給を開始しても、そうとうの貯えがないと年金で悠々自適の生活などは無理です。
金融庁が公表した、「老後資金が2,000万円不足」が話題にもなりましたが、実際のところ年金だけでは老後資金は足りないのです。
まさに終身雇用と年功序列は崩壊し、加えて年金で老後を暮らすも崩壊しかけています。
冒頭で紹介した下の図をみてください。
上のパターンが、私たちの親の世代、高度成長期の終身雇用が機能していた人生80歳の生き方です。
そして下のパターンが今の50代以降の終身雇用が崩壊した人生100歳の想像図です。
終身雇用崩壊 Before VS Afterですね。
そもそも60歳まで働けるのか?
60歳から65歳までは、どうするのか?
年金は65歳からもらえるのか?
人生100年時代に65歳からの35年を、年金だけで生きていけるのか?
ここで問題なのが、今の50代は最近まで終身雇用と年功序列の、そして人生80歳のつもりで生きてきたことです。
それはつまり、会社依存度が高く、終身雇用のデメリットである「変化に弱い」部分が致命傷になる可能性があるということです。
終身雇用が崩壊後、どうすればいいのか?
では、終身雇用が崩壊した後、私たち50代以降の世代はいったいどうしたらいいのでしょうか。
それは会社がなくなっても、生きていけるようにすることです。
- 会社にたよらない
- 変化につよくなる
- 自分で稼ぐ力をつける
この3つをすると以下のようなパターンの生き方ができます。
自分で稼ぐ力があれば、いつまで働くか、定年退職などは自分で決めることができます。
自分で稼ぐ力をつけたパターンが以下です。
いつ会社からリストラされても大丈夫なようにしておくこと、定年後も自分で稼ぐ力をもっていれば、人生100年時代もワクワクして生きることができるはずです。
すでに終身雇用と年功序列は崩壊していますから、会社にいるうちに準備をしましょう。
ライフシフトが必要です。
私の場合は、自分で稼ぐ力をつけるために、会社をやめて退路をたちましたが、会社にいるうちから準備をすればより安全です。
【終身雇用崩壊のまとめ】50代は自分で稼ぐ力をつけましょう
ここまで見てきたように終身雇用と年功序列の仕組みは、右肩上がりの経済成長と人口増加がとまった今では機能しなくなりました。
トヨタの社長の発言にもあるように企業側もそう思っています。
そして、さまざまな数字も物語っています。
もう会社は面倒をみてくれないのです。
すくなくても、そう思っていたほうが確実です。
会社に居続けること、依存することは思った以上に大きなリスクでだと思いましょう。
いつ今の会社をやめてもいいように、会社に頼らないで生きていける稼ぐ力を身につけることが大切です。
そうすれば人生100年時代でも、ずっと生き生きとしたワクワクした生き方ができます。
ピンチは実はチャンス!
50代は自分で稼ぐ力をつけて変化に対応しましょう。
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