定年後の人生の過ごし方をどうしたらいいのか?
このモヤモヤする課題を発達段階説の視点でみると、定年後の人生の過ごし方のヒントになります。
発達段階説とは、人はどのように成長して、どんな課題を抱えながら生きていくのかを理論としてまとめたもの。
アメリカのレビンソンという学者が20世紀前半に面接調査をベースにまとめた理論です。
このレビンソンの理論を参考にして、定年後の人生の過ごし方、生き方を考えます。
- レビンソンの発達段階説とは
- 日本人の中年以降の課題は
- 定年後の人生の過ごし方
この記事では、定年後の過ごし方を発達段階説から考えます。
レビンソンの発達段階説とは
アメリカのレビンソンという学者は、1920年生まれの心理学者で、生涯を通して成人発達の理論を研究し、4つの発達段階に分けた発達段階説を提唱しました。
以下がレビンソンの発達段階説です。
レビンソンの発達段階説によると人生の発達期は約25年スパンで繰り返され、それぞれの間には移行段階である過渡期があるということです。
それでは4つの発達段階であらわされた人生を見ていきましょう。
発達段階説を知ることで、定年後の過ごし方のヒントが見えてきます。
あなたの人生と照らしあわせてみてください!
4つの発達段階
レビンソンは、発達段階(ライフサイクル)を4つの四季にたとえてあらわしました。
- 春:児童と青年期(0歳〜22歳)
- 夏:成人前期(17歳〜45歳)
- 秋:中年期(40歳〜65歳)
- 冬:老年期(60 歳以降)
老年期が「冬」となっているところが少し気になりますが、先に進みます。
児童機と青年期(0歳〜22歳)
はじまりはこの世に生まれてか22歳までの「児童期と青年期」です
この時期は、家族や周りの大人に守られながら成長する時期で、学びながら自分の興味や働くことの意味などを理解していく段階です。
成人前期(17歳〜45歳)
成人前期は17歳〜45歳で、さらに4つの段階にわかれています。
まずやってくるのが17歳から22歳までの「成人への過渡期」です。
この時期は、青年期から成人への橋渡しになる時期で、親に守られてきた環境から自分で道を切り拓いていく時期です。
大人の世界への可能性を模索し、成人として最初の自分らしさ、自己概念を持ちはじめます。
次にやってくるのが22歳から28歳までの「大人の世界に入る時期」です。
この時期には、責任を持ち自分の生活をつくりあげることになります。
そして28歳から33歳までの「30歳の過渡期」があり、成人時代を生きるための基盤を形づくっていきます。
成人前期の最後は、33歳から40歳の「一家を構える時期」です。
家庭を築き、家族や友人、会社や地域の人たちとの関係をもちながら、選択した職業の能力を伸ばし、自律した大人としての生活を固めていきます。
中年期(40歳〜65歳)
中年期のはじまりは40歳から45歳までの「人生半ばの過渡期」です。
レビンソンというとこの「人生半ばの過渡期」を思いだす方も多いかもしれません。
「人生半ばの過渡期」は、成人前期から中年期への移行期で、いままでの人生のなかで成し遂げたことは何か、出来なかったことを問い直す時期です。
これまでの道を修正するか、新しい道を切り拓くかといった葛藤が生まれる時期でもあります。
「人生半ばの過渡期」のあとには、45歳さいから50歳の「中年に入る時期」があります。
この時期は「人生半ばの過渡期」の葛藤を解決し、人生はより満足されたものになります。
ライフサイクルの中でも最も充実感を感じる時期になります。
次にくる50歳から55歳の「50歳の過渡期」は、「人生半ばの過渡期」で再設定した課題をさらに実行する段階。
ただ「人生半ばの過渡期」であまり変化をせずに進んできた場合には、この時期に危機が訪れることもあります。
そして55歳から60歳が「中年の最盛期」です。
この時期は中年期を充実させ、完結させる時期になります。
老年期(60 歳以降)
60歳からは老年期です。
60歳から65歳までの「老年への過渡期」では、充実した中年期におわりをつげ、自分が活動してきたいろいろな分野で一線を退き、老年期に入る準備がおこなわれます。
レビンソンの発達段階説は、これで終わりです。
65歳以降の老年期については、特に触れていません。
人生半ばの過渡期の主要課題
このようには人生の中で、人の年齢とともに安定期と移行期が繰り返されるというのがレビンソンの発達段階説の特徴です。
4つの発達段階の間には移行期があり、それぞれ「成人への過渡期」、「人生半ばの過渡期」、「老年への過渡期」といわれています。
そして3つの過渡期のなかでもレビンソンが注目したのが「人生半ばの過渡期」であり、この時期の主要な4つの課題があるといいます。
- 若さと老い
- 破壊と創造
- 男らしさと女らしさ
- 愛着と分離
レビンソンは40〜45歳の人生半ばの過渡期では「中年の危機」が起こると提唱しています。
この4つの相反する課題をどのように捉えて、自分らしい形で解決するのか、受け入れていくなかということが中年期に起こる危機です。
ミッドライフクライシスともいいますね!
人生半ばの過渡期以降を詳しくみると
定年後の過ごし方を考えるために、レビンソンの発達段階説の中でも、人生半ばの過渡期、40歳以降の人生に焦点をあて、深掘りします。
図にするとこんな感じです。
人生の階段を上がっていくイメージです。
人生半ばの過渡期(40から45歳)
まずやってくるのが人生半ばの過渡期です。
前述のように、「若さと老い」、「破壊と創造」、「男らしさと女らしさ」、「愛着と分離」という4つの課題があり人生のなかで大きな危機感を感じる時期といいます。
自分の人生にあてはめてみると、私は38歳で母をなくし大きなショックを受け、精神的にも不安定でした。
でも幸運なことに39歳で今の妻に出会い結婚して、すぐに長女が生まれます。
私にとっての40歳から45歳は、「人生半ばの過渡期」という感じではなく充実した時期でした。
「若さと老い」の葛藤というものもあまり感じず、「まだまだいけるぞ!」という感じでしたね。
あなたの人生では、どんな時期でしたか?
中年に入る時期(45から50歳)
レビンソンの発達男系説の45歳から50歳は中年に入る時期です。
この時期は「人生半ばの過渡期」の葛藤を解決し、人生はより満足されたものになり、ライフサイクルの中でも最も充実感を感じる時期になるとのこと。
私の人生でもこの時期は、アジアのヘッドになったり、カントリーマネージャーを兼務したりと、サラリーマン人生で最高潮の時期だったような気がします。
毎月のように海外出張をしていました。
子供が小さいのに出張も多く、毎日のようにある英語をつかっての会議などにつかれてもいました。
よくわからないモヤモヤした感じが現れたのもこのあたりでした。
これからずっとこの会社でやっていくのだろうか、この先どうなるのかなという漠然とした不安を感じることもありましたね。
もしかするとこの辺りが私にとっての「人生半ばの過渡期」だったのかもしれません。
50歳の過渡期(50から55歳)
レビンソンの発達段設でいけば、50歳から55歳の「50歳の過渡期」は、「人生半ばの過渡期」で再設定した課題をさらに実行する段階です。
私の場合は、50歳の時に会社をやめることになります。
新しいCEOがやってきて、アジアを中心にリストラを始めたのです。
自分がスタートアップした会社、育ててきた会社で、まさかリストラにあうとは思っていませんでした。
予期せぬ転機の始まりです。
そこから3回の転職をすることになります。
危機の連続という感じでした。
五十肩になったり、視力が落ちたり、年齢的な衰えを感じはじめたのも、この時期です。
中年の最盛期(55から60歳)
そして55歳から60歳が「中年の最盛期」です。
この時期は中年期を充実させ、完結させる時期になります。
私の場合は、55歳でオファーをもらって50歳から3回目の転職をしました。
この時は、このまま定年までいけると思いましたが、そうはいきませんでした。
理由のわからない降格などもあり、結局56歳で会社を辞めて、57歳で合同会社を立ち上げ独立しました。
会社に依存せず、自分軸で生きていくほうが幸せな人生後半を生きられると思ったからです。
私にとっては中年の最盛期という言葉はしっくりきませんし、これからまたチャレンジだという段階です。
老年への過渡期(60から65歳)
発達段階説によれば、60歳からの「老年への過渡期」では、充実した中年期におわりをつげ、自分が活動してきたいろいろな分野で一線を退き、老年期に入る準備がおこなわれる時期。
私はまだこの段階に入っていませんが、このような境地には至りそうにありません。
逆に人生100年時代の人生後半をワクワク生きるために、学び直しをしながら新しい働き方に向かって前進している最中です。
自分軸の生き方をつくるための重要な時期が、レビンソンの発達段階でいう老年の過渡期かと思います。
そしてレビンソンの発達段階説は、これで終わりです。
65歳からの生き方については、特に触れていません。
レビンソンの発達段階の問題点
このように人の年齢を発達段階とくみあわせて表現したものがレビンソンの発達段階説です。
「なるほどそうだよなあ」、と思うポイントも多々あるのですが、問題点もあります。
私が感じる3つの問題点をあげます。
問題点①人生後半期のデータが少なく不確実
レビンソンはアメリカに住む中年男性にインタビュー調査をしましたが、対象者の年齢は35歳から45歳でした。
2年後にも再度調査をしたそうですが、それでも37歳から47歳。
調査対象に人生後半を生きた人がいないため、人生後半期のデータが少なく、不確実な点が多いのです。
自分の経験と照らしあわせても、人生半ばの過渡期のあとの45歳以降は、いまでは少し後ろにずれている気がします。
また60歳以降では、老年の過渡期をへてそのまま人生を終えるというのも、現実とあっていないですね。
問題点②日本人にあうか不確実
2つ目の問題点は、調査対象がアメリカの男性という点です。
そのために日本にある仕組みや日本人の生き方にあうかが不確実です。
日本の女性のライフサイクルという意味では、さらに不確実です。
日本の場合は、終身雇用が崩れかけているとはいえ、いまだに終身雇用や定年退職制度が残っています。
いわゆる昭和バブル世代、就職氷河期世代は新卒一括採用、終身雇用、年功序列、定年退職という固まった仕組みの中で働き始めた最後の世代でもあります。
この世代の人にとっては、働き方に大きな影響を与えています。
人生後半の働き方と人生を考える上では、このポイントは欠かせません。
問題点③人生100年時代の生き方にあっていない
3つ目の問題点は、人生100年時代の生き方にあっていないという点です。
前述しましたが、人生半ばの過渡期も、私の感覚では5年から10年程度ずれている気がします。
人生が長くなり、全体的に後ろにずれているのだと思います。
またレビンソンの発達段階説では、老年の過渡期を経て65歳で老年期に入り、そこで人生は変化がなく終わります。
でも今の時代、65歳といったら、まだまだ元気で現役です。
日本の65歳以上の人口比率は、1970年に7%、1994年に14%、2022年では29%に達しています。
さらに2040年には約35%になるという予測もあるのです。
人生100年時代では、定年後は余生ではありません。
日本人の中年以降の課題
ここから発達課題を日本の現状にあてはめて、中年期以降の課題を考えてみましょう。
特にこれから定年の時期を迎える、昭和バブル世代・氷河期世代のライフサイクルはどうなるかを考えてみましょう。
ポイントを図にまとめました。
日本人ならではの人生後半の課題が見えてきます。
50歳の過渡期(50歳から55歳)
人生半ばの過渡期が、この時期にずれてきて「破壊と創造」、「愛着と分離」というような課題があらわれる人もいるかもしれません。
たとえば終身雇用が崩れ始めて、好むと好まざると転職をする人も多くなってきました。
このままのスキルでやっていけるか?
転職は厳しいのでは?
人生100年時代の半分の50歳のタイミングで、こんな思いをもつ人も多いのではないでしょうか
中年の最盛期(55歳から60歳)
この時期にやってくる日本企業に独特な制度が「役職定年」です。
企業規模が大きい会社に役職定年がある割合が多く、従業員500人以上の企業の約3割が役職定年制を導入しています。
役職定年制度を採用している会社において、役職定年の開始年齢は50代後半から60歳になっていて、多くのケースが55歳。
中年の最盛期は役職定年から始まります。
役職定年になると雇用の継続と引き換えに、部長や課長といった役職がなくなり給与が大幅にさがります。
上司と部下が逆転したリ、人間関係がうまくいかなくなり、モチベーションを大きく落とす人も多い。
使えないオジサンなどと、不名誉なことをいわれてしまう場合もあります。
またこの時期には、早期退職の募集などがある場合も多いです。
日本の50代の会社員の多くは、転職があたりまえの欧米のようにいつでも対外試合ができる準備をしていません。
役職定年や早期対象への応募などの短期に備えての準備が必要です。
準備をして上手く対応できれば人生後半戦への好機にもなるのです。
この時期に、人生後半へむけて準備をしているか、していないかで、定年後の生き方が大きく変わります。
老年への過渡期 (60歳から65歳)
60歳で多くの会社員が定年を迎えます。
ひと昔前の時代であれば、定年後は年金で悠々自適に余生を過ごすなどという事も可能でした。
高度成長期で日本経済は右肩上がり、給与も増えて、退職金もたくさんでて、年金は60歳から、退職金を預ければ高金利で利息がたくさんつく時代だったからです。
今は定年60歳で引退する人はあまりいません。
年金の受給開始は65歳からなので、何もしなければ無給の期間が5年続きます。
人によって状況は異なりますが、年金の額も十分とはいえない中で、引退できない人がほとんどでしょう。
60歳で再雇用を選ぶか、転職するか、起業するか。
セカンド・キャリアに向けた人生の選択をする時期でもあります。
人生100年時代のこの時期は、人生半ばの過渡期のように、今までの人生は何だったのか?これからの人生は何を生きがいにすればいいのかと悩むこともあります。
仕事と役割を考え直す時期でもあるともいます。
老年期以降(65歳以降)
レビンソンの発達段階説では、65歳の老年期以降は変化がなくて終了です。
でも今の時代、65歳といったら多くの人が働いています。
さらに2022年の働く高齢者のデータを見ると、実際に働く高齢者の比率は増えており、すでに65歳から69歳の2人に1人が働いているのです。
年金の受給開始年齢も、近い将来70歳まで段階的にひきあげられ、70歳までみんな働く時代がやってきます。
この時期に生きがいをもっている人と、持っていない人では、幸福感に大きな差が出ると思います。
定年後の人生の過ごし方
では定年後の人生を楽しく過ごすにはどうしたらいいのでしょうか?
定年後の人生を楽しく過ごすために大切なことがあります。
- 定年後の人生設計をすること
- 正しいプロセスにそって自分軸のセカンド・キャリアを決めること
レビンソンの発達段階説からもヒントをえて、今までの自分の人生をしっかり振り返り、定年後のセカンド・キャリアをつくるのです。
そうすることで、定年後の過ごし方は充実したものになるはずです。
定年後の人生設計をしっかりすること
人生100年時代における人生後半の生き方では、レビンソンの発達段階説からヒントを見つけることができますが、そのまま使うことはできません。
そして私たちの親の世代の定年後の生き方も参考にできません。
私たちの先輩である人たちが50代で後悔することとしてあげるのが、「定年後の人生設計をしておけばよかった」ということだそうです。
いろいろな試練や危機がやってくる人生後半に備えて、しっかりと計画を立てることが大切です。
役職定年や早期退職、定年や再雇用など人生の選択が必要な時に、行き当たりばったりの対応をしてはいけません。
しっかりと自分の進むべき方向をみすえて、後悔しない選択をすることが大切です。
そのために必要なのが定年後の人生設計です。
定年後の人生設計をしっかりしましょう。
正しいプロセスにそって自分軸のセカンド・キャリアを決めること
定年後の人生設計のポイントになるのが、働き方です。
なぜなら働き方は、単にお金を稼ぐための方法ではなくて、生きていくうえで大切な5つをバランスよく支えるカギになるからです。
- 生き方
- 働き方
- お金
- 人間関係
- 健康
特に定年後の働き方は、生計を立てることよりも、自分のやりがいにつながるような働き方をすることが大切です
自分がやりたいこと、自分らしいセカンド・キャリアを選ぶことです。
自分軸のセカンド・キャリアです!
正しいプロセスにそって自分軸のセカンド・キャリアを決めることが大切です。
- 現状理解 ー 人生100年時代の社会や環境の変化などを現状と自分の現在位置を理解する
- 自己理解 ー 自分棚おろしをして経験や価値観などから、自分らしさ(自己概念)を理解する
- 働き方理解 ー セカンド・キャリアの価値軸、働き方の選択肢、キャリア理論などの理解する
- 人生設計 ー ミッション・ビジョン・戦略・目標などの定年後の人生設計図を描く
- 学び直し ー セカンド・キャリアに必要な学び直しを計画し無形資産を強化する
- 意思決定 ー 意思決定プロセスで意思決定をして、実行可能な行動計画をたてる
- 方策の実行 ー 行動計画とスモールステップを実行する
このプロセスにそって、順番にすすめていくことで、自分軸のセカンド・キャリアに向かって行動することができます。
まとめ|定年後の人生の過ごし方
レビンソンの発達段階説を知ることによって、人生を論理的に知ることができます。
発達段階説は、今までの人生を振り返り、そしてこれからの定年後の人生を考えるヒントになります。
でも人生100年時代は、レビンソンのいうような中年期や老年期とは少し違います。
特に定年後の人生は、レビンソンのことには想像できないほど長くなり、なんとなく過ごすにはもったいなさすぎます。
江戸時代の人と比べれば、人生を2回できるようなものです。
折角与えられた第二の人生を有意義に過ごしましょう。
そして定年後の人生を楽しく過ごすため大切なことがあります。
- 定年後の人生設計をすること
- 正しいプロセスにそって自分軸のセカンド・キャリアを決めること
自分軸のセカンド・キャリアをしっかり描いで、あなたらしい人生後半を生きたいですね。
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