人生100年時代といわれ、人生は長くなりました。
そして長くなった人生では、セカンド・キャリアの選択はさらに大切になってきています。
人生後半の働き方は、生き方、お金、人間関係、健康に大きな影響を与えます。
自分軸のセカンド・キャリアを選んで、人生100年時代をワクワク生きましょう。
ミドル・シニアの人生を考える
なぜセカンド・キャリアが重要になっているのかを確認するために、ミドル・シニアの人生について考えてみましょう。
人生にはステージがあります。
年齢を重ねるにつれて成長していくと同時に、その時々に感じる悩みや不安が変化します。
人間が健全で幸せに生きていくために、乗りこえていくべき課題が人生のステージごとにあるわけです。
これを発達課題といいます。
レビンソンの発達段階説からのヒント
アメリカのレビンソンという学者が、人はどのように発達するのかを研究をして「発達段階説」を唱えました。
これによると人生には4つの発達段階があり、40歳から65歳までの25年間が中年期にあたります。
この理論をみて「そうなんだ」と納得するミドル・シニアも多いのではないでしょうか。
中年期には「人生半ば過渡期」「50歳の過渡期」「老年への過渡期」などの過渡期がたくさんやってくる時期なのです。
そして、この時期をどう過ごすかで人生後半の生き方が決まってくるのです。
日本人の中年以降の人生にあてはめると
レビンソンの発達段階説は、アメリカで行ったかなり前のインタビュー調査がベースになっています。
サンプルとなった人の年齢は45歳ぐらいであり、人生後半期のデータが少なく、また日本人の生き方に会うかという点には少し疑問が残ります。
そこでレビンソンの発達段階説を日本人の中年以降の人生にあてはめてみました。
日本の働く仕組みと日本ならではの課題があることに気がつかされます。
この図をみてわかるように、日本のミドル・シニアには、自信をなくすような出来事が結構おこります。
役職定年や早期退職、降格や納得いかない評価、定年と再雇用などが代表的な出来事です。
そういった出来事に遭遇したとき、「私の今までの人生はなんだったのだろうか」「これからどうやって働いていけばいいのだろうか」といった不安や悩みが出てきてモヤモヤする人が多くなります。
このモヤモヤする時期が、人生後半に向けての過渡期の時期をいえるでしょう。
この出来事の受け止め方と、モヤモヤの対応の仕方で人生後半の展開がかわってくるのです。
ミドル・シニアの会社員には、大きさの違いはあっても必ずといってよい程、過渡期があらわれます。
その時に慌てないように、50代になったら、過渡期を受け止める準備をしましょう。
なぜ50代60代はモヤモヤするのか
なぜ50代60代はモヤモヤするのでしょうか。
なぜある出来事をきっかけにして、モヤモヤしたり不安になったりするのでしょうか。
それは出来事によって「自己概念の揺らぎ」が現れてくるからです。
たとえば役職定年になった人を例にあげてみましょう。
私は多くの役職定年を迎えた方のお話を聞いてきましたが、役職定年という日本独特の制度は、自己概念にとても大きな影響をあたえます。
役職定年になったことで、自分らしさを失いかける人がとても多いと実感しています。
例えばAさんの場合です。
Aさんは、あるメーカーの部長職でしたが、55歳で役職定年になり、新しい部署に配属されました。
役職定年前の部署ではたくさんの部下がいましたが、新しい部署では部下はいなくなり、上司は元の部下のひとりです。
役職定年になって新しい部署で働き始めて3か月たったころ、Aさんは自信がなくなり、自分らしさがわからなくなってしましました。
なぜでしょうか。
それはAさんの自己概念が揺らいでいるからです。
役職定年になる前のAさんは、次のようなことを大切にして働いていました。
- 自分が培った経験を活かして会社に貢献しよう
- 積極的なコミュニケーションをして、チームの力を高めよう
- 部長として自信をもって行動して、若い人のロールモデルになろう
- 部下が成長できるように、力を引き出せるように働きかけよう
ところが役職定年という出来事をきっかけに、Aさんはいつのまにか、こんなことを考えて働くようになりました。
- 前に役職定年になった先輩のように、みんなに煙たがられないようにしよう
- もう部長ではない、肩書きもないから、控えめで出しゃばらないようにしよう
- 新しい部署で働いていく自信がなくなったのは、なぜだろう
- 嫌われないようにして働いていくことを、私は望んでいるのだろうか
- 何か悲しさを感じる、なぜか虚しさを感じるのはなぜだろうか
Aさんは、役職期定年という出来事をきっかけにして、こんな風に変わってしまいました。
自分らしさがわからなくなってしまったのです。
Aさんが、自分らしさがわからなくなった理由は、「今までの自分」と「揺らいでいる自分」との間のギャップからくる矛盾や葛藤が生まれたからです。
これが「自己概念の揺らぎ」です。
自分らしさがわからなくなったときには、この自己概念の揺らぎはなぜ現れたのかを理解することが大切になります。
自分の今までの人生を見つめ直し、自分のもっている自己概念と、自己概念の揺らぎはなぜ起きているのかを知ることで、再び自分らしさをもてるようになります。
「自己概念の揺らぎ」は悪いことではありません。
「自己概念の揺らぎ」はありたい自分に向かって成長するきっかけになるのです
ミドル・シニアのセカンド・キャリアが重要なわけ
人生100年時代といわれる今、セカンド・キャリアはさらに重要になってきています。
ここからは、ミドル・シニアのセカンド・キャリアが重要なわけを3つのポイントから見ていきます。
重要なわけ①定年後の時間は長い
ミドル・シニアのセカンド・キャリアが重要なわけのひとつめは、定年後の時間は想像以上に長いということです。
定年後60歳から今までの寿命とされてきた80歳までは20年。
1日で自由に使える時間を11時間とすると、365日×20年=80,300時間ということで約8万時間あるという計算になります。
人生100年時代となれば、倍の16万時間です。
実はこの8万時間は、サラリーマンが22歳から60歳までの38年間働いた時間より長いのです。
このように定年後60歳からの自由時間は想像以上にかなり長い。
ミドル・シニアが考えるべきは定年後の8万時間をどう使うかです。
この定年までのサラリーマン時代より長い時間を有意義に過ごすために大切になってくるのが、セカンド・キャリアです。
ひとつめのキャリアが会社のために働いてきたなら、セカンド・キャリアは自分のために選びたいものです。
重要なわけ②働き方がカギになる
ミドル・シニアのセカンド・キャリアが重要なわけ2つめは、働き方がカギになるからです。
2022年の働く高齢者のデータを見ると、働く高齢者の比率は右肩上がりで増えています。
すでに65歳から69歳の2人に1人が働いているのです。
そして長く働く人はますます増えていくでしょう。
働くことはとても良いことですが、どうせ働くなら自分のやりたい働き方をしたいですね。
働くということは単なるお金稼ぎの方法ではありません。
働き方は、生き方、お金、人間関係、健康に大きな影響を与えます。
あなたは何歳まで働きたいですか。
何をして働きたいですか。
重要なわけ③人生3ステージで生きられない
ミドル・シニアのセカンド・キャリアが重要なわけの3つめは、人生100年時代になり人生3ステージで生きられなくなったからです。
人生3ステージとは今までは当たり前だった「教育ステージ」「勤労ステージ」「引退ステージ」の人生。
私たちの親の時代のように、大学を卒業したら新卒で会社に入り、その会社を定年まで勤めあげ、あとは退職金と年金で暮らすという生き方はもうできないのです。
これからのミドル・シニアで世代には、親の世代には普通だった人生3ステージが通用しないのです。
人生はマルチステージの時代は、ひとつの大きな山を登っておりる富士山型の人生から、たくさんの山がある連峰型へ人生に変化します。
マルチステージの時代にはいくつかのステージを超えていかなければなりせん。
人生後半に向かってセカンド・キャリアを選ぶ必要がでてきます。
自分の価値軸、自分軸で生き方をシフトするライフシフトが必要になります。
間違いだらけのセカンド・キャリア選び
このように長くなった人生においては、セカンド・キャリアが重要になります。
つまりセカンド・キャリアの選び方が重要になってくるわけです。
正しいセカンド・キャリアの選び方をすることが重要なのですが、間違って選んでしまう人もいるのが現状。
セカンド・キャリア選びでよくある間違いは、以下のようなものがあります。
- 意思決定の間違い→人生の大切な意思決定を他者に委ねてはいけない
- 焦点の間違い→会社や他社に焦点をあてて優先してはいけない
- 進め方の間違い→キャリア選択の正しい進め方・プロセスを無視して進めてはいけない
こんなかでも特にやってはいけない間違いは、焦点の間違いです。
人生後半のカギになるセカンド・キャリアを、会社や他社に焦点をあてて選んではいけません。
自分に焦点をあてて自己理解を深める
セカンド・キャリアを選ぶときは、会社や仕事に焦点をあててはいけません。
仕事を選ぶという意識が強すぎると、仕事はお金を稼ぐためにやるもの、仕事は我慢してやるもの、仕事が辛くても仕方がないというようになりかねません。
例えば自分はやりたくないけれど、働かなくてはならないから、再雇用を仕方なく選ぶ。
こういう選び方をすると、長い人生後半が生きづらくなるかもしれません。
会社に焦点をあてたり、他者に焦点をあてたりしても、豊かな人生を過ごせないでしょう。
ではセカンド・キャリアを選ぶときに何に焦点をあてるのか。
それは自分です。
下の図は、自分の周りの世界をあらわした図です。
まず真ん中に自分がいます。
そして自分をとりまく自分事の世界があります。
その周りには自分事になっていない自分を含む世界、さらにその周りには他人事の世界があります。
自分らしく生きていくためには、自分に焦点をあてなければなりません。
意識を自分に向けるのです。
意識が外に向いていると、世間的な一般論で物事を考えたり、他人事になったりしてしまいがちです。
一般論や他人事でセカンド・キャリアを考えると、誰かの人生を生きることになりかねません。
定年後のセカンド・キャリアは、定年後の人生そのものであり、人生後半の人生をどのように生きていくかの重要な選択になります。
セカンド・キャリアは単に働いてお金を稼ぐ方法ではなく、生き方や、人間関係、健康にもおおきな影響をあたえます。
大切なことは自分らしく生きること。
自分と向き合って自分を理解すること、焦点を自分にあてることが大切です。
自分に焦点を当てて自分と自分の今までの人生を見つめ直すことで、自分らしさがわかってきます。
ライフライン・チャートで自分を見つけよう
ここからはライフライン・チャートをつくって、自分の今までの人生を見つめ直してみましょう。
ライフライン・チャートとは、自分の今までの人生を振り返る図です。
横軸は「年齢」、縦軸は「あなたの気持ちの浮き沈み」です。
線をつかって描くだけでも良いですし、写真や図をいれても良いです。
今までの人生でどんな出来事があって、どんな心の浮き沈みがあったのかを見えるように形にします。
いつ、どこで、どんなことがおきましたか、その時の登場人物や印象に残った言葉、あなたの感情などを思いだしてみましょう。
人は、自分のことは結構知らないもの。
ライフライン・チャートを描くことで、自分の今までの人生を振り返り本当の自分に出会いましょう。
あなたの今までの人生を振り返ることで、自分らしいこれからの人生を考えましょう。
ライフライン・チャートをつくる手順
あなたのライフライン・チャートをつくる手順を解説します。
「人生の振り返り」シートで人生を振り返る
まずは「人生の振り返り」シートを使って、人生をしっかりと振り返り記入します。
あなたが今の状態になっているのには、今までの人生が関係しています。
今までの人生をしっかりと振り返って書き出していきます。
振り返るのは最近のことだけではありません。
人生まるまる振り返ります。
小学校までの時期、小学校時代、中学校時代、高校時代、大学時代、社会人になってからの20代、30代、40代、そして50代を振り返ります。
それぞれの時代での出来事と、楽しかったこと、成功したこと、辛かったこと、失敗したことなどの自分に正直に書きだしていきます。
かなり前のことで忘れていたこともたくさんあるはず。
しっかり自分と向きあうことで、自分の今までの人生が浮きあがってきます。
1ページで足りない時は、2ページ、3ページとつくって書いてください。
「キャリア棚おろし」シートでキャリアを振り返る
次に「キャリア棚おろし」シートを使って、今までの仕事を振り返り記入します。
仕事は生活や人生に大きな影響をあたえてきたはずです。
今までのキャリアでは、どんな会社でどんな仕事をしてきたでしょうか。
転職した人もいれば、1社でいろいろな役割をしてきた人もいるでしょう。
楽しかったことや、成功したこと、辛かったことや、失敗したことを思いだして書いていきます。
それがキャリア棚おろしです。
1ページで足りない時は、2ページ、3ページとつくって書いてください。
2つのシートを参照しながらライフライン・チャートをつくる
「人生振り返り」シートと、「キャリア棚おろし」シートのふたつのシートで人生とキャリアを振り返ると、いろいろなことがあったなあと感じると思います。
2つのシートに書いた出来事とその時の気持ちをライフライン・チャートにあらわしましょう。
2つのシートを参照しながら「ライフライン・チャート」を描きましょう。
あなたの人生がストーリーとしてよみがえってきます。
ライフライン・チャートをつくってみて感じたことを書きだして話す
ライフライン・チャートが描けたら、つくってみて感じたことを書きだしてみましょう。
自分に大きな影響を与えた出来事を5つ選んで、その時の気持ちを書き出します。
書き出したら、そのとき感じたことを自問自答してみましょう。
- どのような状態になると心が満たされるでしょうか
- どのような状態になると心がしずんでくるでしょうか
- どんな人に影響されたでしょうか
- どんな言葉に影響されたでしょうか
- ライフラインの山の共通点は何ですか
- 谷から脱出した際の共通点は何ですか
自分軸のセカンド・キャリアに向かうには
ライフライン・チャートを描いて自分と自分の人生を振り返ることで自分の理解がすすんだと思います。
自己理解は自分軸のセカンド・キャリアを選ぶためのとても大切なプロセスのひとつです。
キャリア選択には正しいプロセスがあります。
自分軸のセカンド・キャリアに向かっていくためには、キャリア選択の正しいプロセスで進めることが大切になります。
キャリア選択の正しいプロセスで進める
キャリア選択のプロセスの全体像は以下のような手順になります。
- 現状理解
- 自己理解
- 働き方理解
- 人生設計
- 学び直し
- 意思決定
- 方策の実行
「ライフライン・チャート」は、この中の自己理解をするためのひとつのツールです。
自己理解をしっかりとするには、「ライフライン・チャート」だけではなく効果的なツールをいくつか使って、しっかりと自分の棚おろしをすることが大切になります。
安心して相談できる人を見つけて話をする
自分軸のセカンド・キャリアに向かうための効果的な方法は、安心して相談できる人を見つけて話をすることです。
なぜなら自分ひとりで自己理解をする、キャリア選定プロセスをまわすには限界があるからです。
自分ひとりで自問自答しても、なかなか自分が知らない自分に気がつけないのです。
例えば、ライフライン・チャートを使ったワークも、感じたことを話すことでより自己理解を深めることができます。
ジョハリの窓という、他者とのコミュニケーションを通じて、自分の理解が深まることを説明した図をご存じでしょうか。
自分について、自分自身が知っている部分と知らない部分、他者が知っている部分と知らない部分を分けると下の図のように4つの領域に分かれます。
- 開放の窓 ― 自分は気がついていて、他者も知っている自分
- 秘密の窓 ― 自分は知っているが、他者は知らない自分
- 盲点の窓 ― 自分は気がついていないが、他人は知っている自分
- 未知の窓 ― 自分も他者も、誰も知らない自分
自分を理解するということは、自分が知っている領域である開放の窓をひろげることになります。
では、どうすれば開放の窓をひろげられるのか。
それは、自分について話すことです。
図の一番左側のように、自分のことや自分の経験を話すことで、開放の窓を緑の矢印のように下にひろげるイメージです。
そのとき、他者である聴き手は、話し手に関心をもってしっかりと話を聴きます。
次に聴き手が話し手に質問をします。
この時の質問は、話し手の経験を再現するような質問です。
ある出来事があって、その時にどういう感情をもったのかといった、自身を振り返るような質問をし、必要に応じてフィードバックします。
その質問に答えることで、話し手は自問自答をするようになり内省が深まります。
結果的に、自分が知らなかった自分に気がつくことができ、開放の窓がひろがっていきます。
つまり自分のことを人に話すことで、自己理解が深まっていくのです。
このような理由で、自分軸のセカンド・キャリアを選ぶためには、安心して相談できる人がいると効果的です。
自分のことを話すことで、自分では気がついていない自己概念に気がつくことができますが、話すのは、誰でもいいわけではありません。
例えば親や兄弟では、見方に偏りが生まれるでしょうし、会社の上司や部下などに、自分のとてもプライベートな内容を話すのは難しいでしょう。
なぜなら、あなたに対して固定観念や先入観をもっていたり、何かしらの利害関係があったりする人に話をするのは気がひけますし、主体的に内省することが難しいからです。
自分を理解するために話をするのに最適なのは、キャリアコンサルタントです。
キャリアコンサルタントは、キャリア形成に関する知識と経験をつんだ専門家ですし、守秘義務があるので、話した内容を誰かに話すことはありません。
「安心して相談できる人」をみつけて、伴走してもらうのが自分軸のセカンド・キャリアをはじめる近道です。
定年後のセカンド・キャリアは自分軸を大切にする
人生100年時代のセカンド・キャリアは自分軸で選びましょう。
- これまで大切にしてきた価値軸は何でしょうか
- これから大切にしていきたい価値軸は何でしょうか
- これから大きくしたい価値軸は何でしょうか
- これから手放したい価値軸は何でしょうか
人生の後半は、自分軸のセカンド・キャリアであなたが主役の人生を切り拓きましょう。
ミドル・シニアのモヤモヤ個別相談のお知らせ
最後にお知らせです。
モヤモヤするミドル・シニアのために、個別相談を提供しています。
モヤモヤする人はお気軽にお問い合わせください。
無料のモヤモヤ相談は、以下から受け付けています。
コメント