50歳からの人生の転機|Kさんに起こった人生の転機

人生の転機を乗りきる

人生の転機。

転機とは人生の分かれ目です。

転機をどのように受け止め、どのように対応するかで、その後の方向が変わってきます。

50歳になったKさんにも転機が訪れました。

  • 人生の転機に起こること
  • 人生の転機の影響度をきめる3つの要素
  • 人生の転機の乗りきるには

この記事では、50歳からの人生の転機について解説します。

※尚、この話は、私の経験をベースにした実話です。(名称等は変更してあります)

目次

Kさんの50歳からの人生の転機

Kさんは現在56歳、もうすぐ57歳になる男性です。

32歳で外資系メーカーの日本ビジネスを立ち上げに参加し、日本ビジネスの成長に大きく貢献してきた自負をもっていました。

実績も認められて執行役員にもなり、このまま順調に仕事を続けていくことができると思っていたKさん。

そんなKさんに予期しなかった出来事が起きたのは50歳の時です。

本社のCEOが変わり、新しいCEOがアジアのビジネスを縮小するといい始めたのです。

アジアにあったオフィスも半減、人員も大きく削減することになり、Kさんもリストラの対象になってしまったのです。

「この会社にこんなに貢献してきたのに、まさか自分が辞めさせられるとは・・・」

予期していなかった出来事に動揺したKさんは、藁にもすがる気持ちで、その時タイミングよくオファーをくれた会社に転職することにしました。

なんとか仕事を続けなくてはという思いだけで転職した会社は、古い体質の日本企業でした。

たいした仕事もないのに夜はいつも遅く、ことあるごとに呼びつけられては小言をいわれる。

上下関係の激しいいわゆるブラック企業で、Kさんは次第に自分らしさを失っていきました。

「このままこの会社にいたらダメになる」

そう悟ったKさんは、6か月でこの会社を辞めます。

そしてそこから更に2回の転職をして56歳で会社を辞めて独立することになります。

Kさんは、50歳からなんと3回の転職を経験することになったのです。

振り返るとKさんの50代は転機の連続でした。

KOHEI

私にも、いくつかの転機がありました!

50代にはいくつかの転機がやってくる

人生はいつ何が起きるかわからないものです。

転機にはプライベートなことに関係する要因や、仕事に関係する要因があります。

転機の要因

そして50代に訪れる転機は、仕事に関係するものが多くあります。

体力の衰えも感じ始める50代。

そこにやってくるのは、役職定年や、早期退職、降格やリストラ、そしてだんだん近くなってくる定年という出来事です。

レビンソンというアメリカの心理学者がいます。

レビンソンは発達理論(Developmental Theory)という、人間の成長と発達の過程を研究した人です。

そのレビンソンのライフサイクル図式によると、40歳から45歳で人生半ばの過渡期を迎え、その後60歳から老年の過渡期に向かう変化の時期が50代。

レビンソンのライフサイクル図式

中年期には「若さと老い」、「破壊と創造」、「男らしさと女らしさ」、「愛と分離」という心理的葛藤が課題として現れるとレビンソンは言っています。

ミッドライフクライシスという言葉もありますが、自分の今までの人生は何だったのか、これからの人生はどう生きていけばいいのかといった心理的課題に向きあう時なのです。

レビンソンは1920年生まれですから、人生100年といわれる今の時代は、このライフサイクル図式はもっと後ろにずれてくるのかもしれません。

つまり人生半ばの過渡期は50代になって現れることが多くなってくるのだと感じます。

50代という時期は、元々さまざまな転機が訪れる時期なのです。

そんな心理的状態の時にやってくる人生の転機、それはいったいどんな意味を持つのでしょうか。

人生の転機とはー転機の定義

人生の転機とはいったい何なのか、人生の転機にはどんなものがあるのでしょうか。

人生の転機を理解するには、シュロスバーグの理論が役に立ちます。

シュロスバーグは、キャリア・デベロップメントは転機の連続であると考え、転機のプロセスを理解して、転機に上手く対処できるようになることに焦点をあてています。

シュロスバーグによる転機の定義
  • イベント(ある出来事が起きること)
  • ノンイベント(予期していたことが起こらないこと)

この2つの転機の中で、イベント(ある出来事が起きること)には予期していたものと予期していなかったものがあります。

例えばKさんのリストラは予期していなかったイベント(出来事)です。

55歳で役職定年が設定されている会社であれば、55歳で役職定年がくることは事前にわかっています。

こういった出来事は予期していたイベントになります。

そしてノンイベントは、予期していたことが起こらないこと。

たとえば予期していた昇進ができない、計画していた転職ができないといったことです。

人生の転機に起こること

このようなイベント(ある出来事が起きること)、あるいはノンイベント(予期していたことが起こらないこと)の転機があると、その転機が変化をもたらします。

転機は通常、次の4つのうちの1つまたは2つ以上の事柄についての変化を伴うといいます。

人生の転機に起こる変化
  • 役割 ― 人生の役割のうち、どれかがなくなるか変化する
  • 関係 ― 人との関係が弱まったり、強まったり、消えたりする
  • 日常生活 ― 生活の中でいつ何をするかが変化する
  • 自己概念 ― 自分と自分を含む世界の捉え方が変化する

Kさんの場合も、50歳でリストラという転機が訪れ、この4つすべてにおいて大きな影響を受けました。

この中でもミドル・シニアの転機を理解するために、大切にしたいのが自己概念です。

自己概念

自己概念とは、簡単にいうと「あなたらしさ」

  • 「自分は何者であるか」「どういう存在であるか」という自己イメージ
  • 自分と自分を含む世界をどう捉えているか
  • ありたい自分に意味づけられた「モノの見方・考え方」

転機がどのように、あなたの自己概念に影響しているかを振り返ることで、あなたらしい人生の歩き方がみえてくるかもしれません。

KOHEI

50過ぎたら、あなたらしさを大切に!

人生の転機の影響度をきめる3要素

人生の転機をのりきるためには、転機の影響度をしっかりと理解することが大切です。

転機の影響度を決める3要素
  • 転機そのもの
  • 転機を体験する本人
  • 支援システム

転機そのもの

まず転機そのものの理解です。

その転機は、予期していたものか、予期していなかったものか、期待していたのに起こらなかったノンイベントか。

転機が与える影響は、当事者である本人にしかわかりませんが、その影響度などを評価するときには4つの視点があります。

転機を評価する視点
  • 転機の深刻さ ― 役割、関係、日常生活、自己概念がどの程度変化するか 
  • 転機のタイミング ― 人生の中で良い時期か悪い時期か、準備期間はあるか
  • 転機に対するコントロール ― 本人はコントロールできるか、選択肢はあるか
  • 転機の持続性 ― 転機によって生じた状態はいつまで続くか

転機を体験する本人

そして転機に直面した時の、その人の対処能力がどの程度あるかも影響します。

転機への対処能力を左右する特徴
  • 人生に見通し ― 人生の見通しを肯定的に捉えているか、否定的に捉えているか
  • コントロール ― 本人が人生をコントロールできると思っているか、宿命とあきらめているか
  • 対応スキル ― ストレス解消の仕方や、意思決定にもとづいた行動をとれるか
  • 過去の経験 ― 以前の転機には上手く対処でき、経験を積んでいるか

Kさんが50歳で直面したリストラという転機の場合でいうと、Kさんには人生を肯定的に捉えて、前向きに行動をしていました。

ただリストラという転機に対する経験が不足していたため、動揺して安易に転職先を選んでしまったところがありました。

でも、この50歳の転機での経験が、その後にやってくるKさんの人生の転機に対処するための能力になっています。

支援システム

支援があれば、転機の影響度は下がります。

支援システムとは、以下の3つが考えられます。

支援システム
  • 人 ― 心理的な支えになる家族や友人はいるか
  • 物的支援 ― 十分なお金や物的支援はあるか
  • 公的機関や民間団体 ― 転機を支援する機関や団体はあるか

人生の転機の影響度を総合的に理解して、対応します。

人生の転機の乗りきるには

シュロスバーグは転機に対処するための2段階の方法を次のように提案しています。

  • リソースを点検する
  • 変化を受け止める

ここで重要になってくるのが、転機に対応するためのリソースの点検です。

リソースを点検するために役立つのがシュロスバーグの4Sです。

4つのリソース(4S)
4つのリソース(4S)
  • 状況(Situation)
  • 自己(Self)
  • 支援(Support)
  • 戦略(Strategy)

状況(Situation)

ひとつ目のSはSituation、状況です。

本人が状況をどのようにとらえているかです。

  • 状況は予期されていたか
  • 状況をプラスとみるか、マイナスとみるか
  • タイミングは良かったか、悪かったか
  • 自分は転機のどこにいるか(開始時点か、中盤か、終わりか)
  • 到達したい目標はなにか
  • その目標に到達する方法は何か

自己(Self)

自分自身の内面的なリソースを確かめるには、次のような問いかけを自信にしてみます。

  • 人生に対してどのような見通しを持っているか
  • どのくらい個人的な幸せを感じているか
  • 自分は変化に立ち向かうほうか、圧倒されるほうか
  • 自分は変化に直面したとき、コントロールできると思うほうか

支援(Support)

どのような支援が、どのくらい得られる可能性があるかを特定するには、次のように問いかけてみます。

  • 必要とする援助を他の人から得られるか
  • 家族や友人からの支援があるか
  • 自分を支えていた支援は、この転機で変わってしまったか
  • 支援システムは、今回の転機で大きな力になるか
  • 学び直すためのお金、時間、必要な支援はあるか

戦略(Strategy)

状況、自己、支援を確認したら、可能な対処戦略を評価します。

  • いろいろな戦略を使っているか
  • 転機のもつ意味づけを変えようと試みたことはあるか
  • ストレスの処理を行っているか
  • 目の前の課題に応じて戦略を変えることができそうか

リソースを点検したら、変化を受け止めて、戦略を実行します。

転機を乗りきるために、リソースを強化して、成功が期待できる戦略と行動計画をたて、実行していくのです。

Kさんはどのように転機をのりきるのか

50歳で予期せぬリストラという転機に直面したKさんは、転職した会社を6か月で辞めてしまいました。

この時のKさんは、リソースの点検をあまりすることなく、転職先を選んだことがうまく対処できなかった理由でした。

でもこの転機でえた経験がKさんに、その後も訪れる転機を乗りきるための力になります。

50代での転機は、自分を見つめるということが大切。

50代から3回の転職を経験したKさんは、56歳で会社をやめて独立する決断をします。

自分の人生を見通した時に、これからの人生は会社に頼らずに生きるのが自分らしいと気がついたからです。

人生の転機を乗りこえたKさんには、これからもいくつかの転機がやってくるかもしれません。

でも、人生の転機を乗りこえてきたKさんは、これからも自分の経験をベースにして転機を乗りきり、自分らしく人生をあゆんでいくでしょう。

まとめ|50歳からの人生の転機

人生の転機をのりきるためには、転機の影響度をしっかりと理解することが大切です。

転機の影響度を決める3要素
  • 転機そのもの
  • 転機を体験する本人
  • 支援システム

影響度を理解したら、リソースを点検しましょう。

変化をコントロールする4Sです。

4つのリソース(4S)
4つのリソース(4S)
  • 状況(Situation)
  • 自己(Self)
  • 支援(Support)
  • 戦略(Strategy)

リソースを点検したら、変化を受け止めて、戦略を実行します。

人生の転機は、50を過ぎてやってきます。

人生100年時代は、70歳まで多くの人が働く時代。

定年後にも、転機はいくつかやってくるでしょう。

転機への対応能力を高めることで、転機を好機にして、自分らしい人生を選んでいきましょう。

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